私は、桜条要から預かった資料を
部屋の片隅で一字一句残さず読んだ。
彼奴は、私が戦争で日本にいない間も
ずっとこの計画を遂行していたのだ。
それは、何とも恐ろしかった。

ーーAI-X
人間として生まれた一卵性双生児の片方の子供に
人工知能を植えつけ、戦闘能力の高い人間を作りだす。

AI-Xが誕生すれば、日本はどんな脅威からも守られる。
この戦争は、日本が勝つ為の戦争ではなく、
AI-Xを生みだす為の一歩にすぎないーー

家族や戦友が何人も亡くなったあの時、
彼を始め日本政府は、すでにこの計画の為に動いていた。

桜条要のやり方は、残酷であった。
捕虜となっていた外国人を使って、
彼らは人体実験を行っていた。

日本が負けて捕虜を解放すると、
次に貧しい人間を対象として実験を繰り返した。
カラスが掻き集めた資金を元に、実験を行い
被験者には十分な生活費を与えた。

被験者となった人間は実名で記録に残され、
失敗の原因や対策、改善点など
事細かに書かれていた。
さらに、カラスの名簿も作られ、
その思考や体力も分析されていた。
大人も子供も、関係無かった。
なぜ、カラスの組織の人間を分析したのかは
最後のページで分かった。

ーーAI-Xが誕生した時、
人間の力で彼らに勝ってしまっては
そのAI-Xは失敗作である。
よって、人間の力にどれほど勝るか
研究対象が必要だ。
その対象として、ある程度軍事能力を高めた人間を
育てる必要がある。しかし、育てる必要はもうない。
すでに我々の手の内には、人を殺めることに長けた
臨機応変な対応のできる組織が存在している。
カラスは悪業を生業として生きてきた分、
日本政府に逆らえない。裁かれる対象として
いずれAI-Xと戦ってもらうこととなるーー

ひどい話だ。
自分で組織しておいて、後は実験対象とする。
そんな運命など、
カラスの人間どもは知らないだろう。
私の知るカラスは、桜条の作った犯罪組織だ。
だが、表向きに犯罪者として扱われている彼らは
犯罪者によって犯罪者として裁かれる。

生きる為に道を踏み外した人間の最期を
私は預かってしまったのかもしれない。

桜条要は自分は支配者だと言った。
あらゆる人間を支配下におき、
自分の都合のいいように誘導してきた。

彼こそ、
裁かれるべきではないか……。

私の中にフツフツと怒りが湧いていた。
その時、私は彼の脅威として
戦うことを決意したのだった。






今日は、
『ありがとう 100パチ記念日』!!

懐かない猫というブログをひょんなことから開設。
下書き程度に小説書き始めて。
タイトルも決めずにそのままblog名で『懐かない猫』って小説ですって紹介。
ほんと適当な小野崎ですよ~(;´∀`)

最初はね、無名の人間がblogで長編小説を書いて
見てくれる人なんていないだろ、って思って
今書いてる小説は短編の予定でプロット作成したんです。

でも、読んでくれてる人が1人でもいるなら、
ちゃんと自分が伝えたいことを書ききりたい、
この作品を通じて何か感じて欲しい、
そう思うようになってプロットを途中から編成しなおしました。

ここで最後まで書き終えたら、
他の場所で同じ作品を公開したいです。
さらに読みやすく面白いと思ってもらえるように書きたい。
1人でも多くの人に読んでもらえる作品にしたいです。

そして小野崎の野望はまだまだ続きます。

この作品を皆で創りたい。
原作はここのblog小説かもしれないけど、
一緒に漫画やアニメ製作してくれる方がいるなら是非お願いしたい‼
この作品をもとに曲をかいてくれる人がいるなら、
ここのブログでも流したい!!
ご無沙汰してる動画もUPしたいし、イラストもお待ちしております。
キャラをイメージしたコスプレなんかもOK!!

これからも皆様と一緒に楽しみながら活動していきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします(*´ω`)

小野崎

「桜条要……」
「やぁ、久しぶりだねぇ」
そう言って私に近づいて来る彼を私の心は拒んでいた。

「僕の言った通り、カラスの名前を君もよく聞くようになっただろう?」
「国と絡んで今度は何をする気だ」
「今度?まだ僕は調理の下準備しかしていないというのに」
彼はゲラゲラと笑った。
「カラスは嫌いかい?醜いかい?」
「あぁ、嫌いさ。この街をどれだけ荒らしたと思っている?
まともに働く善良な市民の金を蝕んで、どんどん彼らの心も薄汚れてきた。
お前の組織はこの街をいずれ崩壊させる」
「僕も群れてる奴らが嫌いだ。だが彼らは僕にとってとても価値のある存在だ。
そもそも善良な人間という基準値も存在しない世の中で、
善か悪かのボーダーラインを決めるのは、個人なんだよ。」

彼は耳元でこう言った。
「僕がこれからすることは、僕にとって善だ」

「大抵のことは僕の思い通りになる。
なぜなら、僕より傲慢で頭の回転が良いヤツはそうそういない。
でも、僕にとって脅威となるのは1人だけいる」

「君だ」

「だから、僕は君とこうして大人になった今でも遊んでるんだ。
君がいつ僕の邪魔をしてくるのか、僕の善をつぶしにくるのか、
ずっと期待しているんだよ」
「なぜ……」
「君は僕のことが嫌いだからさ」

「でも僕を嫌う君を見ているのが面白いから、僕は君を嫌いになれない。
僕は国と手を組んでいる支配者、そして君は国に左右される支配下の人間だ。
でも、僕を嫌う君は、僕と対等にいるかのようで面白い」
「嘲笑いに来たのか」
「いいや、君がなかなか動いてくれないからヒントをあげに来たんだ」
そう言って彼は鞄から資料を取り出した。
「ここにこれから僕がしようとしている事が書かれている。
これを読んで君がどう動くかは自由だ。
だが、国家秘密レベルの情報をタダで渡すわけにはいかない」

「僕はカラスを君に預けたい」
「私に預けたら、全員まとめて刑務所行きだぞ」
「君にとってカラスが悪ならそうすればいい。だがこれを読んで考えた上でならな」
そう言って彼は私に資料を渡した。

『AI-Xの開発 日本治安部隊対策本部』
表紙に書かれたその文字は、不透明な現実を表しているかのようだった。
私は現実を知りたかった。
彼の企みで私を利用しようとしているのだと思いつつも、
彼の本心が知りたかった。
もし、それが私の考える悪ならば、
私が止めるしかない。

彼は、私に日本の未来を変える機会を与えたのだから。


2017.04.16 第13話 陰謀

あの常連客が来たのは、カラスの話を聞いて2週間ほど経った頃だった。

「マスター、あれはただもんじゃない」
「あれとは」
「こないだどんな研究か知りたがってただろう?」
常連客は目を輝かせていた。
「この研究が成功すれば日本は世界一安全な国になる」
「戦争の準備と聞いてましたが」
「戦争なんか仕掛けられてもAI-Xにはかなわんよ」
私がAI-Xを知ったのはこのときが初めてであった。
「AI-Xはどんな人間よりはるかに強い。戦車も破壊できるんだってよぉ」
「そのAI-Xという機械を研究しているのですか」
常連客の表情は一瞬にして曇った。
「まぁ、そうだな。人の形した……」
常連客は苦笑した。
「俺もうまく言えなくて悪いがよ、とにかく平和のためなんだ」
へへへ、っと苦笑しながら放ったその言葉は神妙であった。
グッと一気に芋焼酎を飲み常連客は続けた。
「カラスなんて相手にもならねえ」
そう言って笑うのだった。

カラスに関しては、要の言った通りよく耳にするようになっていた。
戦後、職を失ったやからが悪行を生業としている、と。
いくつか似た組織が出来上がっていたようだが
中でもカラスという名は知らない者がいないほど拡大し、
そして残虐であった。
戦争によって心が狂った彼らは暴れまわっていた。
しかし、捕まる者はほとんどいなかった。

のちに分かったのは、捕まえられなかったのではなく
貴重な人材ゆえに放任されていた、ということだった。

私がそれを知ったのは、常連客が帰ってすぐのことだった。
常連客はかなり酔っ払っていたため少々不安に思いながら
店じまいをし、残飯を野良猫にやりに裏口に出た時だった。

「こんなにいいんですか?」
「君の家も家族が増えて大変らしいからね」
「助かります、ほんと桜条先生には恩が返しきれねぇです」
「こちらも非常に助かっている」
「ありがとうございます」

常連客は桜条に言われてAI-Xについての話を
私に持ち掛けていたのだった。
私は呆然と立ち尽くした。
裏口から見えたその光景を今でも忘れない。
常連客は桜条から渡された封筒を大事そうに
固く胸に抱きかかえ去って行った。
桜条はその姿を見届けた後、
私が見ているのを知っていた顔でこちらを向いた。

「下準備が整った」
桜条は穏やかに笑いながら私に言った。
私は何も言葉に出来なかった。

ゲームは始まった。
僕が残したあの文字を、瑠宇はきっと読んでいるはずだ。

「愁、配給だ」
「あぁ」

僕は藤堂さんに促されて配給を受け取りに行った。
学生のころ使っていた食堂。

孤児のためのこの学校は、小中一貫で同じ制服だった。
街を歩けば一目で孤児だと分かる。
憐みの目を向ける奴も少なくない。
多くは戦後孤児だが、僕みたいなただの捨て子も稀にいた。
僕はこの学校が嫌いだった。
この食堂には同じ制服を着た奴らが
お喋りを楽しみながら同じ給食を口にしていた。

僕にとってそれは違和感でしかなかった。

血のつながりのない人間が一緒に暮らして、
家族ごっこをするヘレンローゼカッツェという組織を含めて
違和感でしかなかった。

だが、今はもっと気持ち悪い。
食堂に集まった人間は、桜条のゲームで
2時間耐え抜いた者のみが集まる。

あたりを見渡すかぎり、
怯えた表情、青ざめた顔色、死んだ目。
パサパサになった固いパンをかじり
仲間の死を無言で泣きながら飲み込む人。
そんな奴ばかりで、イライラした。
きっと同族嫌悪のようなものだろう。
AI-Xと戦闘した光景を目にしたものは
誰だって気分が悪くなる。
次は自分かもしれない、って不安になる……。

「今日はみんな無事でよかった」
空が話し始めた。
「こっちのセリフだよ。お前ら双子がどう戦うつもりかハラハラしてたんだからな‼」
「悪かった藤堂」
「俺と愁がお前らの分まで仕事すればいいだけだろ」
「馬鹿言うな、アレ相手に4時間は無謀だ。護衛で十分助かってる」
「護衛っつっても、安全確認だけであとは別行動だろ」
「足を引っ張るわけにはいかないからな」
「そもそもなんで別行動にしたのよ」
「いざって時、援護しやすいだろ。それに、このゲームは全部倒さないと終わらない気がするんだ」
「なるほどね、まぁ私の護衛は明日からいらないわよ、愁」
「ぇ、」
「薬師として救護にあたる。その分、その仲間の誰かが私の分の戦闘に行く、って取引したのよ」
「誰と取引したんですか」
「見覚えある顔が結構いてねぇ。皆、ここの生徒だったんじゃないかな。
その中の1人にタイガっていう奴がいて。ハーフの男の子だしすぐに分かった。
タイガの率いる部隊が結構悲惨な目に遭ってるらしいから、そこの救護にいく。
私の分はタイガが働くって」
「ほんとに、そんな……」

「愁。誰も信じられなくなったら、前に進むときに足がすくむものなのよ」

「よし、じゃあ明日から椿はそっちで。あと愁は藤堂のフォローしながら2時間生き残れ」
みんな空の言葉にうなずいた。

空と光は、藤堂さんに比較的安全な場所を確保してもらい
そこから空が僕らに情報を知らせ指示を出す。
藤堂さんが爆破装置を仕掛けている間に僕が護衛、
仕掛けが終わり次第、藤堂さんがオトリとなってAI-Xを引きつけ
その間藤堂さんを後方サポート。
AI-Xがトラップ近くに来たら遠隔操作で光が爆破させる。

藤堂さんを護衛している間は
戦闘慣れしていない空と光は隙だらけだ。
だからきっと椿さんは藤堂さんと僕が二人から離れた場所で
戦うことに疑問を抱いたのだろう。
でも、AI-Xを前にして確信した。
誰と行動をともにしようと、あいつらからしてみれば
全員隙だらけだ。

パサパサのパンの最後の一切れを口に入れた。

AI-Xと居たのは間違いなく瑠宇だ。
そして服装も敵のものだ。
どこまで内部潜入する気だ。
瑠宇がヘレンローゼカッツェの仲間を大事に思っていたことを
知っているだけに、いま何が起こっているのか気になる。

ふと窓の外を見ると、オリオン座がみえた。

あの星達は遠いところで互いをみてる。
勝手に目に見えない線で結ばれて、
オリオン座という名前もつけられて。

きっとどんな姿かも知らないまま、
何年も何年もただ光っているんだろう。