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るぅしゃん…キャンディ食べる?……
私は、一瞬何を言われたのか分からず、唖然としていた。
一方、きさらもまた眠そうな顔でこちらをじっと見ていた。

「えっと、…お気遣いなく。」
あぁ、もう自分で何を言っているのやらと少々思いながら返答した。
が、しかし、
彼女は私の顔をじっと見つめてポケットから棒つきキャンディをとりだし、
袋を開けると、勢いよく私の口の中に突っ込んだ。
その素早い動作と勢いを口に入れる寸前で殺したのか、
私の口には、優しく甘いキャンディの味が広がった。
「お気遣い、しない。私、キャンディあげたい。だから、あげる…。」
鴉川はにこにことしながらこっちを見ている。
「あ、ありがとうございます…。」
きさらは頷いた。無防備で満足そうな表情だった。

「さて、きさらちゃん、お部屋に1度お戻りになりますか?」
鴉川の言葉に無表情で頷く。
「今回もお荷物は全て捨てて来てしまったのですね。」
確かに、きさらは身一つでの帰宅だった。
普通、海外で暮らしていたのなら、相当な荷物があっても良さそうなものだ。
「重いの…嫌い。だから、みんなにあげた。残ったの、捨てた。」
あげたってことは…
私がこの口に放り込まれたキャンディのように、やはり強引になのだろうか?
というか、重いの嫌いだからって、
普通、着の身着のままで帰国するかっ!?
あとは捨てただと!?
許しがたい…。

「きさらお嬢様は、本当に困ったお方ですね。」
とても嬉しそうに、鴉川が話しを振ってくる。
「えぇ、本当に困りものですねぇ。」
皮肉を込めて言ってやった。
「私、夜ごはん食べて来た。そろそろ眠い。」
お嬢様ってやつは…。
「それは困りましたねぇ。」
「何が困ったんだ。寝せてやればいいだろう?」
私は、ほぼやけくそになりながら言った。
「だって、きさらちゃん。ここの家出る時に荷造り〜って言いながら
全部業者に引き渡しちゃってさw廃棄処分よぉ〜ww」
それは、荷造りではないっ!
「しかも家具はもちろん、服も下着も何もかもよっ?ww」
「何っ⁉︎」
「家具は、新しいの買っといて、君らの部屋に配置したんだけど、流石に女の子の服とか下着は揃えてなくてw」
「まぁ、揃えてたら気持ち悪いがな。」
「いやぁ、家具買ったら預かってたお金も使い果たしちゃったし〜。」
「私は貸せるような金は持っていないぞ。」
「うん!お金借りる気は無いよ!でも、今日だけきさらちゃんに何か服貸してあげて!」
「あぁ⁉︎」
「るぅしゃん。私に貸してほしい…。シルクのパジャマ…。」
「いや、私は持って無いぞ…。」
鴉川が隣で爆笑しているのに少々イラつきながら、とりあえず自室に連れて行った。

まぁ、もとは私の部屋としてあったわけではなく、
きさらの部屋としてあったみたいだが…。
「壁紙、変わってる。ピンク気に入ってたのに…。ベッド、白いの嬉しい…。でも、天蓋がない…。」
自分で全て捨てておいて、風変わりした部屋に一喜一憂していた。
鴉川のセンスなのだろう。
ほとんどの家具が白を基調としているいかにもお姫様、といった部屋だ。
ベッド2つ横に並べられ、さらにそれぞれに机まで用意されている。
ソファーも棚も白で統一され、トイレとバス付きの部屋。
お嬢様に与える部屋としては、そこまでセンスが無いとも思えないが…。

私は、自分のスーツケースの中の私物を片付けながら
きさらに貸せるような服を探した。
と言っても、探すほど持っていない。
ここに来た時の黒いスーツ、
仕事着用の黒いタンクトップとグレーのパーカー、黒いショートパンツ、
あとは部屋着用のジャージしかない。後々、取りに行こうと思っていたから…。
「悪いが、私もあまり服を持って来ていないんだ。ジャージでもいいか?」
こくりと頷く。
「…先にお風呂入りたい。」
そうか、私はメイドだった…。
「かしこまりました。」
「敬語、いらない…。」
風呂を沸かしに行こうとした私の袖を引き、ボソッと呟いた。
「…あ、あぁ。分かった。」

風呂を沸かしつつ思った。このまま懐かれても…。
そう思い、私は湯船に薬を溶かした。
液体に溶かすと自然に気化し毒ガスが発生するものだ。

「きさら、お湯沸いたから入ってこい。」
コクリと頷くと眠そうに風呂へと向かった。
「お風呂で寝そう…。」
そうだな、永遠に眠れるだろう。
「あとでジャージと下着を用意しておく。タオル類は全て脱衣所の棚に入っていたから出して置いた。」
またコクリと頷いた。

毒ガスが生じるのは5分後。
さらにそれは30分で部屋にガスが充満。
呼吸が苦しいと違和感を感じる頃にはすでに手遅れとなり、
毒は全身にまわっている。
その後、窓を開けずともガスが薄くなっていく便利な薬。

私は、きさらがシャワーを浴びる音を聞きながら、仕事着に着替えた。
少し外に出ていよう。この毒ガスを一緒に吸うわけにはいかない。
鴉川には、取りに行くはずだった私物が足りないから買い物に行くとでも言っておこう。
ちょっとしたアリバイ作りにもなる。

簡単な戦いだった。
そう思いながら部屋を出た。

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