あぁ。また会ったね、一ノ瀬。
きっと君も俺を嫌いになるようなことをするよ。
渓、お前は相変わらず鷹尾颯馬という人間を手探りで
見つけようとしているんだね。
でも、無駄さ。
だって、自分でも分からないんだ。
今、どこを歩けば正解なのか。

議長という肩書を桜条要にもらったのは
ついこの間だったように思う。

カラスを抜け出し、
ヘレンローゼカッツェを抜け出し、
ここに来た。

渓と出会ったのはまだ幼い頃。
あいつは俺の両親がカラスという組織から脱獄した人間の
子供だと知らずに近づいてきた。

親は、口封じか娯楽か知らないが、カラスに殺された。
俺はその場には居なかったが、殺しに来るとしたらカラスだと
教えられていた。そして、よくこの結末を知っているかのような口調で
その日が来たら、どうにかして生きろよ、と言われ続けていた。
俺の平和は10年足らずで終わり、ごみ置き場の前で1人息をしていた。

そして同年代の少年に言われた。
「……あほが」
忘れられないよ、渓。
まるで自分がずっと言いたかったのに言えずにいた感情を
君が言ってくれたんだ。
それまでは、ただ呼吸をする人形のように感情をなくしていた自分に
闘う意欲をくれた瞬間だった。

――俺はやれる。

カラスに入り、この組織の根源を潰してやろうと思った。
鷹尾颯馬と名乗り、歩き出したんだ。
入ってまず感じたのは、どいつもこいつも劣等生。

――ここじゃない。

もっと上に行かなくちゃ、逆襲できない。
この世界を終わらせられない。
そんな時マスターと取引をしてカラスを抜け出した。
逆の角度から見たら違う世界が見える気がする、そんな直感で。
それにカラスに敵対するマスターは、鍵になっているはずだから。

――根源はどこだ。

そして、渓の言葉で心臓が高鳴った。
マスターがカラスとヘレンローゼカッツェの支配者。
マスターが主犯格? 違う。あの人は、損得感情がある。
俺と契約を交わしてまでもう1つ組織を創るメリットはない。
渓の言うことが本当ならば、ヘレンローゼカッツェという組織を
創らざるを得ない状況があったはずだ。

――マスターを動かしている人物がいる。

そいつを見つけなければならない。
だが、マスターが動かされているとしたら、結局俺は手駒。
孤児院から不幸な人間を創りだし、犯罪者を生み出すことに加担した。
罪悪感を抱きつつ、鷹尾颯馬という人間は先を急いでいた。

――俺は手駒で終わるわけにはいかない。

ヘレンローゼカッツェを抜けて、
まだ知らぬ人に会うことにした。
マスターには悪いことをしたが、普通の暮らしに戻るレールを
あなたのやり方では時間がかかりすぎる。
だから、マスター。
俺はあなたを脅迫した。
この呪縛を握っている人物は、誰だ、と。

――きっとその人はこのくだらない世界を楽しんでいる。
まだ見ぬあなたを、俺はどんな醜い手を使ってでも搾取してやる。

――俺が、終わらせる。

そして今、桜条要という人物に近づけるこの席を
ようやく掴み取ったんだ。
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