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「桜条要……」
「やぁ、久しぶりだねぇ」
そう言って私に近づいて来る彼を私の心は拒んでいた。

「僕の言った通り、カラスの名前を君もよく聞くようになっただろう?」
「国と絡んで今度は何をする気だ」
「今度?まだ僕は調理の下準備しかしていないというのに」
彼はゲラゲラと笑った。
「カラスは嫌いかい?醜いかい?」
「あぁ、嫌いさ。この街をどれだけ荒らしたと思っている?
まともに働く善良な市民の金を蝕んで、どんどん彼らの心も薄汚れてきた。
お前の組織はこの街をいずれ崩壊させる」
「僕も群れてる奴らが嫌いだ。だが彼らは僕にとってとても価値のある存在だ。
そもそも善良な人間という基準値も存在しない世の中で、
善か悪かのボーダーラインを決めるのは、個人なんだよ。」

彼は耳元でこう言った。
「僕がこれからすることは、僕にとって善だ」

「大抵のことは僕の思い通りになる。
なぜなら、僕より傲慢で頭の回転が良いヤツはそうそういない。
でも、僕にとって脅威となるのは1人だけいる」

「君だ」

「だから、僕は君とこうして大人になった今でも遊んでるんだ。
君がいつ僕の邪魔をしてくるのか、僕の善をつぶしにくるのか、
ずっと期待しているんだよ」
「なぜ……」
「君は僕のことが嫌いだからさ」

「でも僕を嫌う君を見ているのが面白いから、僕は君を嫌いになれない。
僕は国と手を組んでいる支配者、そして君は国に左右される支配下の人間だ。
でも、僕を嫌う君は、僕と対等にいるかのようで面白い」
「嘲笑いに来たのか」
「いいや、君がなかなか動いてくれないからヒントをあげに来たんだ」
そう言って彼は鞄から資料を取り出した。
「ここにこれから僕がしようとしている事が書かれている。
これを読んで君がどう動くかは自由だ。
だが、国家秘密レベルの情報をタダで渡すわけにはいかない」

「僕はカラスを君に預けたい」
「私に預けたら、全員まとめて刑務所行きだぞ」
「君にとってカラスが悪ならそうすればいい。だがこれを読んで考えた上でならな」
そう言って彼は私に資料を渡した。

『AI-Xの開発 日本治安部隊対策本部』
表紙に書かれたその文字は、不透明な現実を表しているかのようだった。
私は現実を知りたかった。
彼の企みで私を利用しようとしているのだと思いつつも、
彼の本心が知りたかった。
もし、それが私の考える悪ならば、
私が止めるしかない。

彼は、私に日本の未来を変える機会を与えたのだから。


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