ゲームは始まった。
僕が残したあの文字を、瑠宇はきっと読んでいるはずだ。

「愁、配給だ」
「あぁ」

僕は藤堂さんに促されて配給を受け取りに行った。
学生のころ使っていた食堂。

孤児のためのこの学校は、小中一貫で同じ制服だった。
街を歩けば一目で孤児だと分かる。
憐みの目を向ける奴も少なくない。
多くは戦後孤児だが、僕みたいなただの捨て子も稀にいた。
僕はこの学校が嫌いだった。
この食堂には同じ制服を着た奴らが
お喋りを楽しみながら同じ給食を口にしていた。

僕にとってそれは違和感でしかなかった。

血のつながりのない人間が一緒に暮らして、
家族ごっこをするヘレンローゼカッツェという組織を含めて
違和感でしかなかった。

だが、今はもっと気持ち悪い。
食堂に集まった人間は、桜条のゲームで
2時間耐え抜いた者のみが集まる。

あたりを見渡すかぎり、
怯えた表情、青ざめた顔色、死んだ目。
パサパサになった固いパンをかじり
仲間の死を無言で泣きながら飲み込む人。
そんな奴ばかりで、イライラした。
きっと同族嫌悪のようなものだろう。
AI-Xと戦闘した光景を目にしたものは
誰だって気分が悪くなる。
次は自分かもしれない、って不安になる……。

「今日はみんな無事でよかった」
空が話し始めた。
「こっちのセリフだよ。お前ら双子がどう戦うつもりかハラハラしてたんだからな‼」
「悪かった藤堂」
「俺と愁がお前らの分まで仕事すればいいだけだろ」
「馬鹿言うな、アレ相手に4時間は無謀だ。護衛で十分助かってる」
「護衛っつっても、安全確認だけであとは別行動だろ」
「足を引っ張るわけにはいかないからな」
「そもそもなんで別行動にしたのよ」
「いざって時、援護しやすいだろ。それに、このゲームは全部倒さないと終わらない気がするんだ」
「なるほどね、まぁ私の護衛は明日からいらないわよ、愁」
「ぇ、」
「薬師として救護にあたる。その分、その仲間の誰かが私の分の戦闘に行く、って取引したのよ」
「誰と取引したんですか」
「見覚えある顔が結構いてねぇ。皆、ここの生徒だったんじゃないかな。
その中の1人にタイガっていう奴がいて。ハーフの男の子だしすぐに分かった。
タイガの率いる部隊が結構悲惨な目に遭ってるらしいから、そこの救護にいく。
私の分はタイガが働くって」
「ほんとに、そんな……」

「愁。誰も信じられなくなったら、前に進むときに足がすくむものなのよ」

「よし、じゃあ明日から椿はそっちで。あと愁は藤堂のフォローしながら2時間生き残れ」
みんな空の言葉にうなずいた。

空と光は、藤堂さんに比較的安全な場所を確保してもらい
そこから空が僕らに情報を知らせ指示を出す。
藤堂さんが爆破装置を仕掛けている間に僕が護衛、
仕掛けが終わり次第、藤堂さんがオトリとなってAI-Xを引きつけ
その間藤堂さんを後方サポート。
AI-Xがトラップ近くに来たら遠隔操作で光が爆破させる。

藤堂さんを護衛している間は
戦闘慣れしていない空と光は隙だらけだ。
だからきっと椿さんは藤堂さんと僕が二人から離れた場所で
戦うことに疑問を抱いたのだろう。
でも、AI-Xを前にして確信した。
誰と行動をともにしようと、あいつらからしてみれば
全員隙だらけだ。

パサパサのパンの最後の一切れを口に入れた。

AI-Xと居たのは間違いなく瑠宇だ。
そして服装も敵のものだ。
どこまで内部潜入する気だ。
瑠宇がヘレンローゼカッツェの仲間を大事に思っていたことを
知っているだけに、いま何が起こっているのか気になる。

ふと窓の外を見ると、オリオン座がみえた。

あの星達は遠いところで互いをみてる。
勝手に目に見えない線で結ばれて、
オリオン座という名前もつけられて。

きっとどんな姿かも知らないまま、
何年も何年もただ光っているんだろう。









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