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2017.03.16 第11話 代償

「やめろ、きさら!!」
私は全力で走った。
きさらは敵を撃ちながら突っ切る。
もしかしたら、いま撃たれた人も
ヘレンローゼカッツェの仲間かもしれない……。
鴉川の元仲間だったかもしれない。
追いかける私を鴉川は止めなかった……。

愁がいたビルの中にきさらが飛び込んでいく。
私は階段を走る。

きさら、お願いだ。
もう少しだけ待って……。
あいつは弱いんだよ。
弱くて優しいヤツなんだよ。
接近戦は負ける。
そんなの分かり切ってるくせに。
馬鹿……。
AI-Xに勝てる人間なんて
この世にいないんだ。
みんな、分かってんだろ。

私は息を切らしながら崩れかけのビルの5階に着いた。
そこにはきさらが1人無表情に立っていた。
「……愁は?」

きさらが無言で床を指差す。

゛time out 僕らはここにいます s-cat″

涙がこぼれた。
「やっぱり、いるんだ……」

「間に合わなかったなぁ。ん、るぅしゃん?」
「あいつは敵じゃない!!あいつは仲間だ」
私は無意識にきさらの胸倉を掴んでいた。
「私の仲間はAI-Xの関係者だけ」
「ふざけんな!!ヘレンローゼカッツェは……」

そうだ……。
きさらにとってヘレンローゼカッツェは関係ない。
他の人間と何も変わらないんだ。
私が桜条を追ったから皆を巻き込んだのに、
どうしてきさらに当たってんだよ。
きさらは創りだされた本能で戦っているだけなのに。

私はそっと手を放した。
きさらは私の涙を不思議そうにみていた。

「きさら、瑠宇、いくぞ」
鴉川が迎えにきた。

私は怖かった。
AI-Xに見つかったら終わりだと、
きさらを見ていれば分かるから。
私の復讐心がみんなを巻き込んでしまっている、
そんな実感がまた込み上げてきて。
裏切者のような立場になってしまっている今が
すごく苦しくて。
きさらが大事に思えてきてしまっている自分と
ヘレンローゼカッツェが大好きな自分が
敵となっている気がして。
実際、誰の味方なんて言えない立場で。

平然と戦闘を見守る鴉川。
次々に敵に向かっていくきさら。

私には、2人に何が見えているのか分からなかった。

「終戦だ」
鴉川がつぶやくと、きさらも戻って来た。
まるでご褒美をもらいに来る犬のように。
きっとこの言葉には敏感なのだろう。
鴉川は近くのドアを開けた。地下通路になっている。
私達は地下を歩いて1班の部屋に戻った。

鴉川は言った。
「time out。戦う人間の戦闘時間は1日2時間。
 残り数秒。ギリギリのタイミングで撃ったんだろうな」

愁のメッセージは私の胸を余計に苦しくさせた。

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