鴉川を先頭に私達は外へ出た。
崩れかけの廃墟のビルが並ぶ街。
人かげのない静かな空気が私を緊張させる。

身を潜めて時が過ぎるのを待っていた、幼少期の記憶がふと蘇った。
兵が私達家族の前に現れて、私と両親を引き裂いた。
途切れ途切れの曖昧な記憶……。

その時だった。
銃声が1発響きわたる。
撃ったのはきさらだった。
草むらからドスッと倒れる鈍い音がする。

きさらは走りだした。
時速50〜60キロはある。
さらにビルの3階の窓に飛び込み、2発銃を撃ち込んだ。
人間のわめき声が聞こえる。
助けを請うその言葉はきさらの銃声に掻き消された。

きさらを意識しながらも、誰かに見られている気がした。
鴉川もそれに気付いているようだ。

「流石、猫だな」
「黙れ」
「気をつけろ、AI-Xの開発に携わる人間を滅亡させようなんてバカを考えてる連中もいる」
「……」
「そんなことしたところで、桜条要は何も困らないのになぁ」
「駒が減ったら、新たな駒を増やすだけ、ってところか」
「流石、子猫ちゃん」

来る……右後方斜め上‼︎
銃口は私達に向けられてる。

この感覚から0.2秒の判断が生死を分ける。

私は息が詰まる感覚がした。
右後方斜め上。
避けるべきその位置にきさらが飛んで来た。

ーーーーダメだ、きさら‼︎

心の声が叫ぶ。

それはとてもゆっくりに見えた。
空中で銃を構え、きさらは引き金を引いた。
銃弾が空中でぶつかり、散った。

鴉川は少し微笑んだ。

きさらは地上に降りたって直ぐ、尋常じゃない脚力で
ターゲットの方向へまた飛んだ。

私は割れた銃弾を服の裾で掴んだ。
s-cat125……
銃弾に刻まれたその文字は、愁のものを意味していた。
ヘレンローゼカッツェは野良猫と言う意味を持つ。sは愁のこと。
猫である愁が125番目に撃った銃弾、ということだ。

……愁がここにいる。
「待て‼︎きさらーーっ!!そいつは敵じゃない!!」

きさらには私の声が届かない……
愁は自分がここにいることを知らせる為に、
あえて分かりやすく撃ったんだ。
ゆっくり狙いを定めて私達が気付いたところで撃った。
避けられるように。

やめろ、きさら……止まれ‼︎
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