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桜条要と私は中学からの同級生だった。

転校先にいた彼の存在は私以上に浮いていた。
気になってしょうがなかった。
好奇心で彼に近づいてしまったのが、私の人生を大きく変えた要因となった。

「あの……、何読んでるの?」
私が彼にかけた最初の言葉だった。
放課後の教室に2人。どの部活にも所属しない私と要が残っていた。
要は表紙を見せた。
「洋書だよ。興味あるなら貸すけど」
「いや、英語苦手だから」
「僕も苦手。でも、夢があるんだ」
「夢?何になりたいの?」
「科学者。僕がこの世のすべてを変えるんだ」
「かっこいいじゃん」
「馬鹿だな、って思ってるでしょう?」
「すげーな、って思うよ。何にも考えてない僕とは違う」
「じゃあ、君は一生支配下だろうね」
「え?なに言ってんの?」
「目標をもつ僕は支配者になれる。誰にも流されずに生きるんだ」

爽やかに言い放った彼の顔を思い出せない。
でも、当時から彼は暗い征服心を持っていた。

彼は、本当に科学者になったと後に風の便りで聞いた。
私はというと、結局彼の言った通り支配下の人間で、
高校卒業後に戦争に駆り出され、
命からがら帰還した。
多くの戦友を失い、家族を失い。
誰でもいい。旧友がここを訪ねて来るのを静かに待っていた。

「いらっしゃいませ。」
深く帽子を被った同年代の男が来客した。
「久しぶりだね。コーヒーでいいよ。」
聞き覚えのある口調。
「……要?」
「流石だね」
誰でもいいとは思ったが、彼が来るとは。
「科学者になったんだって?」
「論文が注目されただけ。面白いのはこれからさ」
私はコーヒーを出す。
「今は研究資金も足りなくてね。組織を支配して金儲けしながらやってる」
「組織……?」
「あぁ、貧困層をかき集めてね。ゴミあさりしてたカラスの前に餌をやると群がるんだよ」

あの時もこんな表情をしていた気がする。
寒気を与えるような絶対王者の顔。

「カラスは賢い。優秀だ。だが、獲物の前では貪欲。騙しやすい」
「お前、一体何をしてるんだ」
「下準備だよ。調理前のね。それが終わる頃には君もカラスの名前をよく聞くようになるだろうよ」
そう言うと、金をおいて店から出て行った。

あの時、あえてカラスの組織の主犯格が自分だと伝えにきた。
そしていま、彼は政府とつながりを持っている。

私は、彼の考えが読めなかったが、
とても嫌な予感がしていた。



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