2017.02.17 第8話 旧友
戦後の悲劇から数年経った頃。

私はいつしかマスターと呼ばれるようになっていた。

戦後、空いた裏路地に建てた喫茶店。
夜は酒も出す。憩いの場。
戦場で失った沢山の戦友。昔の友もどこへ行ってしまったのか……
いつの日か、ここに立ち寄ってくれると信じて営んでいた。

だが、来るのは悪い噂だけだった。
仕方ない。喫茶店でくつろげる余裕のある者は、
もともと金持ちか、犯罪で一儲けしたヤツくらいだった。

ある常連客が私に言った。
「なぁ、マスター。知ってるか?」
「何です?」
「カラスって組織の人間が言ってたんだけどよぉ、次の戦争に向けて国が動いてるらしいでっせ」
「また戦争ですか。こりごりですねぇ。先にこの国を立て直してほしいものです」
「いや、それがよぉ、今度は人間が戦わなくていいらしいんだ。なんやら、その研究をしてるとかで」
「ほう」
「俺は、今度その機関に就職しようと思ってな?」
「どんな研究何です?」
「それが詳しいことはわかんねぇんだがな」
常連客は酒を片手にまた続けた。
「でも、俺はどうせろくでもない人間になっちまった。せっかく声をかけてもらえたんだ、やろうと思うんだ」
「カラスは国ともつながっている、ということですか……」
「まあ、それを考えちまうとどうにも怪しい話になるがな」
「私はあまりカラスを知りませんが、危険でしょうね」
常連客は目を閉じて溜息交じりに笑った。
「あぁ、ここもしばらくご無沙汰になるかもな。どうだ?マスターはやらないか?まだ若いんだし採用なるぞ」
「私はもう危険な橋は渡りたくないから、こうして稼げない仕事をしてるのですよ」
私達は笑った。

内心、笑えない話だった。
また戦争が始まるのか、と思うと吐き気がした。
それだけじゃない。
カラスが国とつながっているだと?
何をするきだ……要。

「でも、もう少し詳しい話が分かったら検討したいので教えて頂けますか?」
「あぁ、マスターにはいつも世話なってるからな」
「助かります」

桜条要、お前は今なにを考えている?
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