研究観察課…。

私は訳が分からないまま、そこにいた。

だが予測不能な状況には慣れている。

職業病だろうか。
そう、冷静におきた出来事を対処する。
その時、最善と思った通りに進む。
全てを疑い、自分を信じて…。

更衣室から出るとすでに鴉川が待っていた。

「うんうん、よく似あってる。」
鴉川は笑顔で私をみた。
さっきまで、あんなに深刻で頼りない顔してたくせに。

「瑠宇、君は今日からここで働いてもらう。」
「桜条要の命令か、それともお前の独断か?」
「我が主の判断だよ。もともと、君が盗み聞きしなければ巻き込まれずにすんだのに。」
「違う、あれは…。」
「別に僕は怒ってないよ。むしろ、ここに来てくれて歓迎だ。」
「なぁ。」
「ん?」
「さっきから、戦場とか…物騒なところみたいだが。」
鴉川が笑う。
「そうだね。僕の身の危険が君に分散されるって思うと、ほんと感謝しなくちゃね。」

鴉川が社員食堂に案内した。
「さてと、じゃあ説明しよう。」
コーヒー片手に話し始めた。

ここは、国家政府が極秘に作った研究施設。

日本は元号、弦嗣(げんし)48年に世界大戦で敗戦国となった。
結果、貧困層や孤児が増え財政は崩壊していた。
各所で暴動、犯罪が相次ぎ、警察は手に負えなくなった。
働き場所のない貧困層は、組織をつくり身を守った。
この時代を生き抜くために。
ヘレンローゼカッツェやカラスも基は同じだろう。
カラスは金を巻き上げて、食糧を得て、雨風をしのいでいた。
ヘレンローゼカッツェはカラスに巻き上げられた金の奪還や
他組織に対するの復讐の依頼を受けて収入を得ていた。

裏社会が目に見える社会。
それがいま。

だが、世界はそんな日本をさらに追いつめようとする。
敗戦国日本は領土を奪われていない。
日本領土を求めて、他国が争っている。
いつ、どこに狙われるか分からない、というのが現状だ。
日本の治安の立て直しよりも国家が優先したこと。
それが、日本領土を守るための開発。

「AIと人類の遺伝子を組み合わせることに成功したんだよ。」

AI…
人類の持つ知能を機械的に実装する、
人工知能への試み。

「人の遺伝子を持つなら、人じゃないか。」
「そうだね。ただ、彼らは与えられたものが人間じゃない。」

研究により、
一卵性双生児を人工的につくることに成功。
さらに、一定時間特殊培養液に受精卵をつけることで
人類の本来の力を超えた体力、判断力、回復力
を持って出生することが分かった。
さらに実験を重ね、片方の出生児には人工知能を埋め込み、
AならばBというように機械的な知能に脳を上書き。
都合のいいようにプログラミングされた人間の出来上がりだ。

「戦うために生まれた人間、AI-X。彼らの名前だ。」
「きさらも…。」
「そう。AI-X4、これがきさらの名前だ。」

戦いの練習の為に、きさらはこっちに連れて来られた。
きさらは他のAI-Xとは違う。
戦闘能力値が異常に高く、戦いに集中するほど、
プログラミングによる抑制が作動しない。
下手したら、仲間も判別つかないで暴走する可能性がある。
いわば最終兵器。
ただ、練習は積まないといざという時に使い物にならない。
そこはただの人間と一緒だ。

「我々は、練習による評価、対策と報告を行う。」
「それに、私も加われということだな。」
鴉川は頷いて続けた。

練習には実弾を使う。
相手は人間だったり、機械だったり。
いつどこに敵がいるかは分からない、実戦形式。

「人間がAI-Xと戦うのか?」
「言っただろう。僕の所属していたカラスは僕が桜条に来てから行方不明で遺体も分からないって。」
「まさか…。」
「今はAI-Xの練習相手だよ。きっと、僕を恨んでるだろうね。」
「じゃあ、」
「君の仲間も。捕まったらAI-Xの練習相手。そして、敵だ。」

嫌だ…。
嫌だよ…。会いたくない。
ここでは。

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