きさらは相変わらず油断すると驚異的な力を発揮する。
鴉川は幸せそうに、そんな彼女の世話をする。
だが、きさらは保護者のように付きまとう鴉川に対して冷たい。
鴉川はそれでも彼女と過ごせることに喜びを感じているようだった。

そしてなぜか、きさらは私に懐き、私にキャンディーをくれる。
私は複雑な心境できさらの不器用な愛情表現を受け入れる。
私は、たまに思う。今なら…と。
だが、結局様子をうかがい続けているのだった。

敵陣に居ながら無防備な日常。
互いに誰も味方じゃない3人の共同生活は
気持ち悪いほど穏やかで…。
お互いの本心なんて、分かりもしない。
演技の生活は、すでに1ヵ月が経とうとしていた。

ある夜。
私はのどが渇いて大広間に水を飲みにいった。
大広間から続く一つのドア。
鴉川の部屋。
声が聞こえる。

「我が主、彼女をまたあの戦場に送るというのはなぜです?」
鴉川が誰かと話している。
「お嬢様はやっとこちらの暮らしにも慣れてきて…。」

「君は、人類の幸せを考えられないのか。」

桜条要だ…。

「ですが、」
「君には分からないだろう。カラスとして善も悪も食いつぶしていたんだから。」
「…。」
「更生するために、私のもとに来たんだろう?」
「私は…お嬢様にも幸せになってほしい。」
「彼女は人ではない。」
「…。」

穏やかな日常は
きっと幻想なんだ…。

私は生まれてからずっと、
何も起こらない平凡な暮らしに憧れていたのかもしれない。
でも、私の生きる道は
やっぱり…暗がりで。
汚い路地裏なんだ…。

カラスが善も悪もついばみ、
野良猫は強がって。誰にも媚びない。

私達は、結局弱者なんだ…。




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