私は、マスターから依頼文を受け取ったのち、二階のシェアハウスに戻った。

シェアハウスには4部屋ある。だいたいが相部屋だ。
それぞれに部屋の名前が付けられている。

風の間…
倉坂空(くらさかそら)と倉坂光(くらさかひかる)の部屋。
彼らは双子だ。
空はリーダー的な存在で温厚な人柄。
対して光は人嫌い。双子の兄である空の言うことしか聞かない。
2人はハッキング担当で、仕事ではいつも助けてもらっている。
組織を知るものからは『蜘蛛』と呼ばれている。

星の間…
谷島愁(たにしましゅう)、藤堂奏汰(とうどうかなた)の部屋。
愁は『無口スナイパー。』
暗い、とにかく暗い…。同い年だがほとんど話さない。
藤堂さんは『狂った拷問官。』
この呼び名はなぜか彼も気に入っている。
ヤクザがらみの依頼は藤堂さんに任せておけば安心だ。

紅葉の間…
椎原椿(しいはらつばき)、佐多野乃花(さたののか)の部屋。
椿さんは黒髪で美人。仕事で薬などを使いたい時に提供してくれる。
ついた呼び名は『闇医者』
野乃花ちゃんは唯一の年下。外部からの聞き込み役。
掌で相手を転がし、仕事が終わると消え去る、『毬使い』。

そして、私の部屋。
紅の間。
私の役目は内部に潜入して相手の情報を得る。呼び名は『猫』。
場合によっては暗殺依頼も引き受けるが…。元は、もうここにはいない人の仕事だった。
ある依頼を引き受けた後、行方不明になった男だ。

…鷹尾颯馬(たかおそうま)。
私に暗殺の術を教えた。『アサシン』と呼ばれ恐れられた男。

どこにいるのか、私達はずっと調べていた。
だが、未だに見つからない。
あれから2年、彼の名前を口に出す者はいなくなった。
内心では思っている…どこにいるんだ、と。

ふと我に返り、自室の隅に置いてあったスーツケースを取り出した。
桜条家に潜入する準備をしなくては…。
マスターによると桜条家に住み込みで雇われることになっているらしい。

名前は本名である、一ノ瀬瑠宇(いちのせるう)としての潜入。
普段、マスターは別名をくれる…
しかし、驚いたことに今回の依頼主は
桜条要…桜条の娘の祖父であった。

もはや、潜入ではない。
一体何が目的なのだろう…。
桜条家を恨む私に、なぜ孫の命を渡すんだ…。
報酬を支払った後は、自分の身も危険になるはずなのに…。
同時に、私が本名で潜入するのは私自身にもリスクの高いことである…。

でも…
きっとこの仕事を終えたとき、全てが終わる。
そう感じていた。




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