上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

きさらは、私が買ってきたプリンアラモードを美味しそうに食べた。
すっかり崩れてしまっていたが、気にしていないようだった。

「おかわり!」
きさらは可愛い声で私にねだる。
「これ、道路で落として崩れてるけどいいのか?」
きさらは首をかしげて、私の持っている袋からもう一つ取り出し食べ始めた。
別に気にならないのか、それとも言葉が通じていないのかは分からなかった。
でも、彼女はとても幸せそうに食べた。
「きさらちゃん、おいしい?」
鴉川の言葉に満足げに頷く。
まるで父親のように、鴉川も嬉しそうに笑った。ガスマスクの下で。
「鴉川、そろそろ外したらどうだ?」
「え?もう毒ガス平気?」
「大丈夫だからこうして、私はガスマスクも付けずに平然としてるんだろ。」
「も~早く言ってよ~。」
鴉川はマスクを外し、一息つきながら眼鏡をかけた。
「渓、お紅茶。」
「かしこまりました、お嬢様。」
鴉川はきさらのぶっきらぼうな命令に喜んで対応した。
きさらは3つ目のプリンアラモードに手を伸ばす。
「きさら、そんなに食べたら腹壊すぞ。」
私の警告を無視してきさらは食べ続けた。
「ハラ、分かんないけど、壊さない。」
分からないものを壊さないと断言している。
まったく何を根拠に言っているんだか…。

「るぅしゃん、毒ガスってなに?」
プリンに集中しているかと思ったら案外、人の話を聞いているんだな…。
「お前には関係ない。今日はゆっくり休め。」
「るぅしゃん、なんか隠してる。」
「メイドとあろうもの、お嬢様に隠し事をするとは。同じ使用人として悲しくなります。」
鴉川が紅茶をきさらに出しながら、口をはさんでくる。
「ちょっとした事故で、ガスが発生したんだ。でも、もう安全だから…。」
私はごまかした。
きさらは静かに立ち上がる。そして淹れたてのティーカップを手に持っていた。
私が見えたのはそこまでだった。
「熱っ!」
気づくと、コートに紅茶がかけられていた。
きさらは、一歩も動いていない。
だが、ティーカップは私の心臓を命中するように当たっていた。
防弾性のコートであったのが幸いだった。
飛び散った紅茶で首筋が火傷した。
ひりひりとするその痛みと心拍数が私を固まらせた。
床にはティーカップの破片が散らばっている。
まるで、私の心の中を表しているかのようだった。

「私は、人間。でも、みんなより強い。なかなか倒せない。」
きさらが、ぽつりぽつりと話し始める。
「私は、二人分の私でできている。だから、強い。」
「私は、人を傷つける。そして、傷つけられる。こうして…。」
「何度も、何度も。繰り返してきた。悪夢。」
「るぅしゃんも私を傷つけようとした。だから、お返し。」
「私、るぅしゃんにキャンディーあげたのに、悲しい。」
「仲良くなれたら、って思うのに。難しい。」
「私、るぅしゃん守りたい。」
「るぅしゃん、苦しそうだから…。」
「…だから、これで喧嘩はおしまい。」

私はなんと答えたらいいか分からなかった。
でも、きさらは泣きそうな顔で私に手を差し出す。
私は、彼女の手を握り返していた。

二人分のきさら…何度も繰り返した悪夢…

私を、

守りたい…?

頭の中で彼女の言葉が繰り返される。
分からない…。
どうして?

きさらは微笑んだ。

「良かったね、きさらちゃん!これから3人仲良く暮らせるねっ!」
きさらは不審そうに鴉川を見た。
「渓は、あんまり好きじゃない。」
「えーーっっ⁉なんで?きさらちゃんが小さいころからずっと一緒にいるのに!」
「るぅしゃんは好き。」
「なんで?おかしいでしょ!今日、殺そうとした方が好きで、小さいころからお世話してきた僕が好きじゃないとか!瑠宇ちゃんが女の子だからか?なら、僕も女装すれば気に入ってもらえる?」
「やめとけ、鴉川。そういうところが気持ち悪いんだろう。」
「あー!ひどい瑠宇ちゃんまで!きさらちゃんは一言も僕を気持ち悪いなんて言って…」
「気持ち悪い。」
「きさらちゃぁぁん!!」
「泣くな、鴉川。」
「あー、もう!瑠宇ちゃんがきさらちゃんに変な言葉教えたからだ!」
「渓、うるさい。」
「もう、今日立ち直れないかも…。」

こうして、私達3人の不思議な共同生活が始まった。

色々あった一日だった。
きさらの謎は深まった。
同時に、彼女を知りたいと思った。

ヘレンローゼカッツェが分裂した今、
彼女を生かすも殺すも、私次第なのかもしれない…。
スポンサーサイト
Secret

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。