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「お前は…」

ヘレンローゼカッツェが愛用していた、闇に消えるような黒いコート。
大事な仕事の時は着用するのが私達のルーティンだった。
1人1人違うデザインだが、それぞれのコートの特徴は覚えている。
彼が着ているそのコートは…。
間違えない…。
このデザインは2年前に消えたアサシン…鷹尾颯馬。

彼はゆっくりと深く被ったフードをとった。
「久しぶり。一ノ瀬。」
変わってない。私を唯一苗字で呼ぶその声…。
少し不器用な笑顔も…。少し冷たい瞳も…。
私は、左手に持っていた荷物を落とした。
「どこに行ってたんだよ、今まで。…お前のせいで私は。」
涙が止まらない…。
「私は…お前の仕事もこなして来たし…何より心配したんだぞ。」

ゆっくりと鷹尾が歩み寄ってくる。
「ごめんな。」
私は、涙を拭って鷹尾を見た。

予想外の出来事に、私の思考は完全に停止した。

鷹尾は…

……私に銃口を向けていた。

「一ノ瀬、俺はそもそもカラス側の人間なんだよ…。」
どう言うことだ…?

「俺はマスターと契約したんだ。
俺は組織と言うものから離れて、普通の暮らしを送りたかった。
でも、カラスの間に生まれた子供はカラスとして生きるしかなかったんだ。
そんな時、マスターと出逢った。
マスターは俺に、カラスから抜けて新しい道を歩けるように少しだけレールを敷いてやろう、と言ってきた。
その代わりに、孤児院から連れて来た彼らに戦う術を与え、
彼らが成長するまで1人も命を落とさぬように守りぬけ、と。
最初は騙されたつもりで、あの家で暮らしていた。
マスターがどんな手を使っていたのかは分からないが、
他のカラスの連中は俺に対して反感どころか避けるようになった。
不気味だと思わないか?
カラスは裏切り者に対して、平気で制裁を与える。
むしろ、それを楽しむものがいるくらいだ。
俺は、ずっと気になっていた。俺は今、どこを歩いているんだ…って。
そして、2年前。あの仕事現場に偶然、よく知る奴が居たんだ。
本当は、そいつから少し話を聞き出して現場に戻るつもりだったよ。
だがな、その話を聞いて戻れなくなった。
マスターがカラスを取り仕切っていたからだ。結局、俺はカラスから抜けてなかったんだ。
マスターは、カラスと猫を喧嘩させて、どちらが勝つか見たかっただけなんだよ。」
「お前は、人の言葉に振り回され続けているだけじゃないのか…。」
「あぁ。そうかもしれない。だから、俺はどちらにも戻らないと決めた。
そして、カラスも猫もどっちもこの世から消さなくてはいけないと思った。
どっちに居ようと、マスターの手駒だ。誰も幸せになんかなれない。」
「…だから、私も消す、と言うのか。」
「…まさか。」
鷹尾は静かに銃を降ろした。
「罪のない人間を殺す趣味なんて、本当はどこにもない。
自分がどうして闇の世界でアサシンと呼ばれ続けているのか、全く分からない。」
俯きながら続けた。
「だから、銃口を向けるとしたら。君達、猫を育ててしまった人間…。」
鷹尾は顔を上げ、銃口を自分の頭にあてた。
「こっちの方が、正しいよね?」

「…やめろ。」
「安心して。俺の任務は、自分が育ててしまった猫を命懸けで守って…
カラスも猫も何もかもを失ったマスターに制裁を与えることだから。」
鷹尾は銃をコートの中へとしまった。

「一ノ瀬、俺の気配に気づくなんて、成長したな。」

そう言うと、鷹尾は静かにその場を立ち去って行った。
まだ、何も整理がつかない私を置いて。


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