鴉川は黙って部屋を出て行ってしまった。
きよらのところに行くのだろう。
何となく、1人にしておいてあげたかった。
1回の戦闘できよらに与える影響は大きくても不思議じゃない。
きさらの動きは尋常じゃないし、傷1つない戦いをした。
AI-Xの能力を最大限に引き出すには、
クラウンからの供給が必要不可欠。

「蒼井さん、さっき、きよらが泣いたって言いましたよね」
「えぇ。きよらに実際の戦闘の様子を見せてみたの」
蒼井さんはレポートを打つ手を止めた。
「きよらは、普通の人間と同じ感情を持ってる。人が死ぬところを見るのは怖いし悲しい。
それを、自分の細胞と血液を使って、妹のきさらが笑顔でやってしまうんだからね。
自分の宿命を悔やむわよね、ほんと」
「どうしてそんなこと……やる前から悲しむのなんて予想つくのに」
「じゃあ、自分が何のためにこの施設で閉じ込められたまま生かされてるか
あなただったら、自分の目で確かめておかなくていいの⁇
知らないままの方が、私だったら酷なことよ」

「人によるだろ、そんなこと」
私は呟いた。

「瑠宇さんって、先輩に似てる」
「え、」
「すごく似てる、渓先輩もそんなんだもん。
いつも誰かを悲しませないように、って。でもすごく不器用で、
結局傷つける。自分ばっかり後悔して、それでも
仕事より、自分の立場より、私のことより……、
きさらときよらを1番に考えてんの。馬鹿だよ」
私は若干頭にきていた。
「馬鹿かな」
「そうだよ。AI-Xはいわば私達がつくったモノにすぎないのにさ」
「でも、きさらもきよらも、」
「生きてる、って言いたいんでしょ。分かってるよ。
でも、それじゃ仕事にならない。私達がここで生きるためには、
そんなんで苦しんでちゃだめなんだよ」

蒼井さんは溜息をつきながら聞いた。

「なんで渓先輩がきさらの服の血を洗うか分かる⁇
……殺した相手も生きてたからだよ。それを懺悔してんの」

言葉がでない。

「きさらが殺した相手は、自分が殺したも同然だって。
自分の手が血に染まったほうが、罪を実感できるから、
忘れないですむから」

「全部、捨てちゃえば楽になるのに」


私は桜条家に帰りながら思った。
鴉川が苦しんでるのに気づかなかった。
戦闘前の3人ですごした1か月間、
きさらがどんなわがままを言っても、幸せそうに
笑って許す鴉川を思い出して、切なくなった。

やっぱり、誰も幸せじゃない。

本能で人を殺してしまうきさらも、
望まないものに命を削るきよらも、
2人と向き合い続けた鴉川も、
仕事として割り切ろうとする蒼井さんも。

いつ、この世の中は終わるのだろう。
夜空に輝くオリオン座。
あの星は全てを知っているのだろうか。
この残酷な世界が終わる日を、
知っているのだろうか。

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一ノ瀬瑠宇 (PN:匿名希望)

20170324205244858.jpg

メイド服の瑠宇ちゃん♪( ´▽`)
匿名希望さん、ありがとうございます!!

鴉川は笑顔できさらに声をかける。
「きさらちゃん、お疲れ様。先に戻ってていいよ」
きさらも笑顔で頷く。

戦闘後はまたあの桜条家に帰っているらしい。
「きさらの血まみれの服を洗うのも、僕の役目なんだよ」
鴉川は苦笑しながらつぶやいた。

私は、弱いんだろうか……。
ここにいると自分の感覚が分からなくなる。
私はヘレンローゼカッツェで悪と戦ってきた。
裁かれるべき悪で、悪と戦ってきた。
でも、罪のない人は傷つけなかった。
裏路地で育てられた私の唯一のポリシー。
決して正義ではないし、世間的には私も極悪人だ。
でも、ここの人達は一体何と戦っている??
戦争のための戦争をしてる。
人工的につくられたAI-Xという人種と、
戦争で傷つき、孤独に悪事を働いてきた人間どもが。
戦わされてるんだ。互いに。
桜条という掌のうえで。
もしかすると、マスターの血のなかで……。

鴉川は今日の結果を蒼井さんと話していた。
「きさらの動きは鈍ってないし、久しぶりの戦闘に血が騒いでいたように思う」
「そうですね。銃弾をはじくあの正確さはAI-Xならではです」
「となると、問題は突っ走って無茶をするところくらいか」
「いえ、実はもう一つ問題があります」
「……??」
「きよらの体調が思わしくありません」
鴉川は低い声でやや怒りながら言った。
「なぜ、気づいたときに報告しなかった」
「何をむきになってるんです??これは実験ですよ。
AI-Xのエネルギーの供給源に若干の不調があっても
AI-Xはいつも通りに戦闘が可能。
そして、きよらが戦闘の光景をみて泣いていても、
きさらの感情に影響することは無かったんです。
AI-Xへの供給はあくまでエネルギーとして血液や
特殊培養液を介した増殖細胞のみであり、
身体と心は別物なんです。
AI-Xと双子の片割れが需要と供給を繰り返しても
互いに影響しあうことはない事がこれで証明されました」

蒼井さんは真っ直ぐな視線を鴉川に向けていた。

「きよらは……」
「集中治療室です」
「戦闘中の報告ぐらいしっかりしろ」
「報告したら、きっと中止させたでしょう。
だから私は異常なしとしか伝えなかったんですよ」
「蒼井、」
「私は、鴉川先輩のエゴに従うつもりはありません」
「……」
「それが、私達の仕事じゃないですか」

時を感じさせないほどの静かな空気が
私達を悲しく包み込んでいた。


皆様が描いて頂いたナツネコのキャラクターを
こちらのギャラリーで紹介しています。
≪注意≫素敵すぎても無断転載・お持ち帰り禁止です!!
随時更新していきますのでよろしくお願いします。

皆様のイラストを心よりお待ちしております(*´ω`)


佐多野乃花 (PN:コモモ☆)
komomo_convert_20170316195824.jpg

2017.03.16 第11話 代償

「やめろ、きさら!!」
私は全力で走った。
きさらは敵を撃ちながら突っ切る。
もしかしたら、いま撃たれた人も
ヘレンローゼカッツェの仲間かもしれない……。
鴉川の元仲間だったかもしれない。
追いかける私を鴉川は止めなかった……。

愁がいたビルの中にきさらが飛び込んでいく。
私は階段を走る。

きさら、お願いだ。
もう少しだけ待って……。
あいつは弱いんだよ。
弱くて優しいヤツなんだよ。
接近戦は負ける。
そんなの分かり切ってるくせに。
馬鹿……。
AI-Xに勝てる人間なんて
この世にいないんだ。
みんな、分かってんだろ。

私は息を切らしながら崩れかけのビルの5階に着いた。
そこにはきさらが1人無表情に立っていた。
「……愁は?」

きさらが無言で床を指差す。

゛time out 僕らはここにいます s-cat″

涙がこぼれた。
「やっぱり、いるんだ……」

「間に合わなかったなぁ。ん、るぅしゃん?」
「あいつは敵じゃない!!あいつは仲間だ」
私は無意識にきさらの胸倉を掴んでいた。
「私の仲間はAI-Xの関係者だけ」
「ふざけんな!!ヘレンローゼカッツェは……」

そうだ……。
きさらにとってヘレンローゼカッツェは関係ない。
他の人間と何も変わらないんだ。
私が桜条を追ったから皆を巻き込んだのに、
どうしてきさらに当たってんだよ。
きさらは創りだされた本能で戦っているだけなのに。

私はそっと手を放した。
きさらは私の涙を不思議そうにみていた。

「きさら、瑠宇、いくぞ」
鴉川が迎えにきた。

私は怖かった。
AI-Xに見つかったら終わりだと、
きさらを見ていれば分かるから。
私の復讐心がみんなを巻き込んでしまっている、
そんな実感がまた込み上げてきて。
裏切者のような立場になってしまっている今が
すごく苦しくて。
きさらが大事に思えてきてしまっている自分と
ヘレンローゼカッツェが大好きな自分が
敵となっている気がして。
実際、誰の味方なんて言えない立場で。

平然と戦闘を見守る鴉川。
次々に敵に向かっていくきさら。

私には、2人に何が見えているのか分からなかった。

「終戦だ」
鴉川がつぶやくと、きさらも戻って来た。
まるでご褒美をもらいに来る犬のように。
きっとこの言葉には敏感なのだろう。
鴉川は近くのドアを開けた。地下通路になっている。
私達は地下を歩いて1班の部屋に戻った。

鴉川は言った。
「time out。戦う人間の戦闘時間は1日2時間。
 残り数秒。ギリギリのタイミングで撃ったんだろうな」

愁のメッセージは私の胸を余計に苦しくさせた。


鴉川を先頭に私達は外へ出た。
崩れかけの廃墟のビルが並ぶ街。
人かげのない静かな空気が私を緊張させる。

身を潜めて時が過ぎるのを待っていた、幼少期の記憶がふと蘇った。
兵が私達家族の前に現れて、私と両親を引き裂いた。
途切れ途切れの曖昧な記憶……。

その時だった。
銃声が1発響きわたる。
撃ったのはきさらだった。
草むらからドスッと倒れる鈍い音がする。

きさらは走りだした。
時速50〜60キロはある。
さらにビルの3階の窓に飛び込み、2発銃を撃ち込んだ。
人間のわめき声が聞こえる。
助けを請うその言葉はきさらの銃声に掻き消された。

きさらを意識しながらも、誰かに見られている気がした。
鴉川もそれに気付いているようだ。

「流石、猫だな」
「黙れ」
「気をつけろ、AI-Xの開発に携わる人間を滅亡させようなんてバカを考えてる連中もいる」
「……」
「そんなことしたところで、桜条要は何も困らないのになぁ」
「駒が減ったら、新たな駒を増やすだけ、ってところか」
「流石、子猫ちゃん」

来る……右後方斜め上‼︎
銃口は私達に向けられてる。

この感覚から0.2秒の判断が生死を分ける。

私は息が詰まる感覚がした。
右後方斜め上。
避けるべきその位置にきさらが飛んで来た。

ーーーーダメだ、きさら‼︎

心の声が叫ぶ。

それはとてもゆっくりに見えた。
空中で銃を構え、きさらは引き金を引いた。
銃弾が空中でぶつかり、散った。

鴉川は少し微笑んだ。

きさらは地上に降りたって直ぐ、尋常じゃない脚力で
ターゲットの方向へまた飛んだ。

私は割れた銃弾を服の裾で掴んだ。
s-cat125……
銃弾に刻まれたその文字は、愁のものを意味していた。
ヘレンローゼカッツェは野良猫と言う意味を持つ。sは愁のこと。
猫である愁が125番目に撃った銃弾、ということだ。

……愁がここにいる。
「待て‼︎きさらーーっ!!そいつは敵じゃない!!」

きさらには私の声が届かない……
愁は自分がここにいることを知らせる為に、
あえて分かりやすく撃ったんだ。
ゆっくり狙いを定めて私達が気付いたところで撃った。
避けられるように。

やめろ、きさら……止まれ‼︎

鴉川に連れられるまま、歩いた。
長い廊下を歩いた。
あの部屋にも、AI-Xの双子がいるのだろうか。
きさらときよらの他に、
どのくらいのAI-Xがこの施設で暮らしているのだろう。

研究観察課第一斑。

それが鴉川が所属する部隊であり、
私が所属する部隊となった。
先ほど会った蒼井さんもいる。
他に2名。
結城恂(ゆうきまこと)さんと
川崎雛奈(かわさきひいな)さん。
この2人は主にきよらの状態管理が担当。
私と鴉川できさらの状態管理、戦闘の報告をする。
蒼井さんは、きさらときよらの状態と戦闘状況を
上部に連絡し指示を各部署に伝達する、
といった役割だ。

「本日、午後の部。1600時からの2時間の戦闘に挑む」
全員、鴉川を真剣な表情で見つめる。
「AI-X4にとって、久々の訓練の機会だ」
鴉川が一息ついて言った。
「配置につけ」
返事とともに動きだす。
恂さんと雛奈さんは酸素カプセルのような立体装置を
点検し始めた。おそらく、あれがクラウンなのだろう。
鴉川は、パソコンの前に緊張した顔で腰掛けた蒼井さんの
肩を軽く叩いて奥の部屋に向かった。
任せたぞ、と言うかのようだった。
蒼井さんは、深呼吸をして静かに微笑んだ。

奥の部屋では、きさらが待っていた。
私は唖然とした。
「お前……その格好で戦うのか?」
きさらはまだメイド服のままだった。
「私、可愛いもの、着たい」
真顔で言うきさら。
あぁ、そうだ。コイツはそう言う奴だ。
思わず少し笑ってしまった。
きさらは不思議そうに私を見たが、
ニコッと笑顔を返した。
何と無く、それが少し嬉しかった。

「そろそろ時間だ。瑠宇はとにかくついて来れればいい。
自分の身に危険を感じたら回避しろ。あとは、きさら
のやりたいようにやらせる。情報伝達はこっちでする
から、停戦と言われるまで生き延びろ」
「分かった」
私と鴉川は護身用の武器を確認した。
きさらは慣れた手付きで両手に銃を持った。

始まるんだ。
ここから、私のまだ知らない世界が。
2017.03.03 イメージ画 4

イメージ画第4弾

#7>鴉川渓

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鴉川渓(22)O型 181cm
*元カラス
*桜条要の執事として雇われている研究監察員
*戦闘能力、防衛能力とも高い
*性格:優しい、ふざけるのも好き

#8>蒼井柚希

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蒼井柚希(21)B型 155cm
*研究監察課で鴉川の後輩
*調査報告、データ収集、AI-Xの管理が主な仕事
*性格:自分をしっかりと持っているタイプ


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イメージ画第3弾

#5>椎原椿

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椎原椿(23)A型 160cm
*薬の調合、毒薬づくりが得意
*性格:知的、大人っぽい、頼れる存在
*外部からは闇医者と呼ばれている

#6>佐多野乃花

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ヘレンローゼカッツェ衣装 野乃花ver

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佐多野乃花(16)O型 152cm
*外部からの情報収集担当
*掌で相手を転がし、仕事が終わると姿を消す詐欺師のような存在
*外部からは毬使いと呼ばれている
*性格:負けず嫌い、可愛いものが好き

2017.03.03 イメージ画 2
イメージ画 第2弾

#2>谷島愁
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谷島愁(18)B型 168cm
*長距離暗殺が得意
*性格:暗い、無口
*仲間内からは無口スナイパーと呼ばれることも

#3>藤堂奏汰
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藤堂奏汰(23)A型 182cm
*暴力的、力で敵うものなし
*ヤクザがらみの依頼に強いが顔バレしてる
*性格:キレやすい、ふざけてることが多い
*グロテスクを好み、仲間内からは狂った拷問官と言われる

#4>鷹尾颯馬

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鷹尾颯馬(22)A型 172cm
*暗殺技術レベルが高い
*性格:優しさと厳しさ両方もつ、自分の中で抱えやすい
*アサシンと呼ばれる男